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名古屋高等裁判所 昭和54年(ラ)170号 決定

抗告人(債務者)

伊藤栄

右代理人

蜂須賀憲男

安藤貞行

相手方(債権者)

落合工業有限会社

右代表者

落合次平

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

二当裁判所の判断

本件記録にれば、相手方は名古屋地方裁判所昭和五四年(手ワ)第二五二号約束手形金請求事件の仮執行宣言付手形判決に基づき、昭和五四年八月九日原審裁判所に対し債権差押、転付命令の申立をなし、同裁判所により同年八月一三日本件差押、転付命令が発せられ、これが債務者に対し同月一七日、第三債務者に対し同月一五日それぞれ送達されたこと、抗告人は同年八月八日右仮執行宣言付手形判決に対し異議の申立をするとともに、強制執行の停止決定を得て、これが同月一一日相手方に送達されたことが認められる。

しかしながら債権差押、転付命令による強制執行手続は、債権者においてこれが停止中であることを知りながら敢て右命令の申請に及んだといつた特段の事情が認められない限り、該命令が債務者、第三債務者に送達されることによつて終了し、その後において右債権差押、転付命令に対し執行法上の不服申立をする余地はないと解するのを相当とする。

そしてこれを本件についてみても、右のような執行法上の不服申立を認めるべき特段の事情が認められないことは、前記本件差押、転付命令の発付、送達並びに強制執行の停止決定が相手方に送達された日時及びその経緯に照らして明らかであり、ほかにこれを認めるに足りる資料は存しない。

そうすると、本件強制執行手続はすでに終了し、執行法上不服申立の余地はなくなつたものというほかないから抗告人の主張はその余の点につき判断するまでもなく採用しえない。

よつて、本件抗告は不適法としてこれを却下し、抗告費用は抗告人に負担させることとし、主文のとおり決定する。

(柏木賢吉 上本公康 福田晧一)

抗告の趣旨及び理由〈省略〉

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